暇つぶし小説 「2050年」

雑談

SNSを開くと、「日本の人口が5,000万人を下回る」とのニュースが目に入ってきた。

数十年前に起きた世界的な感染症が流行する前までは、2050年前後で1億人を切るという予測だったらしいが、パンデミックの長期化と自殺者の急増により今や半分以下の人口になってしまった訳だ。

早朝の仲見世通り(東京都台東区浅草)の写真

思い返してみれば、当時、新型コロナウイルス感染症が流行した時期は私もまだ日本にいて社会人として働き始めたばかりだった。

感染症で死んだ友や、職を失い、家族の生活のために保険金目当てで、事故死に見せかけて自殺した者もいた。

あまりにも長く続いたパンデミックのせいで、彼らの死を悼む間もなかった。

かくいう私も、コロナを発症し味覚嗅覚が麻痺したままである。

汚い公衆トイレで鼻をつままずに用を足せるようになった事が唯一の救いだろうか。



韓国に来て20年ほど経っただろうか。

未だに日本での生活が恋しくなる事はあるが、戻るという選択肢はない。

Myeongdong, Seoul, Korea, South, Korean, City, Tower

なぜなら、もう私の知っている日本はとっくの昔に消えてしまっている。

今の日本は、主に中国とアメリカ、そしてほんの1部の金持ちが支配する観光地となっている。

まぁ、観光地と聞けば聞こえは良いが、実際には日本人は奴隷のような扱いを受け、風土や文化はそれぞれ支配している国の好きなように作りかえられてしまった。

パンデミック後に経済を立て直せなかった日本は中国に攻め入られ、集団的自衛権を行使すると言う名目のもとアメリカと中国の戦場となり多くの日本人が死亡。

その後、中国とアメリカは日本の国力が傾いたところで、政治に介入し、日本を半分ずつ統治した。

その手際の良さは、中国とアメリカが手を組んだ陰謀だったのではないかとさえ思われた。

私は、パンデミックが収まり3年ほどしたところで日本政府の政治に嫌気が差し、妻と共に韓国へと移住した。

パンデミックで人口が減ってもなお、高齢者を対象とした施作を行い、復興の為だと若者への税負担を増やす国に未来などある訳がないと感じたのだが、私の考えは間違ってはいなかった。

悲しい事に、親や兄弟は日本に置いて来てしまったので彼らは皆戦争に巻き込まれ死んでしまった。

私が生き残った事自体は喜ぶべき事だが、あの時「一緒に、韓国へ行こう」と説得できていれば、と何度後悔した事だろう。

無理やりにでも連れて来るべきだったのだ。

Destruction, Apocalypse, War, Disaster, Apocalyptic

「ただいま〜!」

妻が買い物から戻ってきたようだ。

ソウルに来たばかりの頃は、差別を受けるのではないかとビクビクしながら街に出たものだが、今では妻を一人で買い物に行かせても安心していられる。

おそらく今の日本ではそうはいかないだろう。都市部でさえ薄暗い道に入ってしまうと日本人から暴行を受け金品を奪われてしまうそうだ。

裕福な人間の多い国の者なら人質にされ、多額の身代金を要求されるらしい。

私も同じ日本人とはいえ、恐ろしくて観光に行ってみようなど思えない場所になっている。

妻「また安い豆腐あったから買ってきたよ〜!」

いつもの元気な妻の声がリビングから聞こえてくる。

妻「あ!抹茶アイスも買ってきたんだよ〜!食べる人早くおいで〜!」

私「いいね〜。抹茶アイス食べたかったんだよねぇ」

息子「えー?!また抹茶なの〜?イチゴが良かったー!」

妻「しょうがないでしょ〜、抹茶アイスの方が半額以下で買えちゃうし美味しいんだもん。」

私「次行った時は、ショウちゃんのアイスだけイチゴにしてあげるから今日は我慢して食べよ?」

ショウちゃん「わかった!約束だよ!」



私たちは、日本にいた時の知人が時給300円程で働かされているお陰で、豆腐や抹茶が安いという事を知らなかったのだ。仮に知っていたとしても、きっと買わないという選択はできなかっただろうが。

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